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「人を襲う。死んでいるとしか思えない姿。行動はゆっくり」
思い当たる点を述べながら、チリチリが右手の指先で摘まんだ左手の指を順に折り曲げる。
「まさしくゾンビよね」
「けど、噛み付くだけで食べてはいないよな?」
四本目の指を折り曲げながらの確認。
「気付いていたか?」
意見は食べないに傾いた。
「ならばあれは肉体の維持ではなく、繁殖の為に人を襲うと考えた方が妥当だな」
「繁殖? 仲間を増やす事が目的なの?」
不安気な金髪少女が上目遣いに尋ねて来る。
「寄生虫なのか、細菌なのか、ウィルスなのかは分からんがな。単純な命令系統で動くからこそ、障害物もものともせず最短距離で追って来るのだろう」
「あたし達、死ぬしかないの?」
涙目になるのを堪え、震えを押さえ付ける為か己の身体を掻き抱く。
「対策は有ると思う。クルーズ船のスタッフは私達を置き去りに海に出ただろう? そしてここは周囲を海に囲まれている」
「そうか、海水かっ」
チリチリが手を打つ。
思いの外良い音が響き、私達三人は息を飲んで辺りを窺った。
未だ、奴等が何を頼りにこちらを見付けているのかが分からないのだ。
それは音か、匂いか、熱でも感知するのか。
知らないと言う不安が恐怖を倍加する。
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