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「まったく、君のせいで……」
「え? 何か言いました?」
「いいや、こっちの話」
この俺が、ため息ばかりの毎日なのは、
甘くない君のせい。
……世の中に、こんなに甘くない恋があるなんて。
「そっちはもっと甘いのか?
バナナパフェ」
「ぇえと。はぃ、甘いと思います……
そっちのイチゴパフェは甘みの強さというか、押しが足りないって、サークルのメンバーも皆同じ意見で……」
「ふーん」
強さと押し、ねぇ。
「ぁ…あの、先輩?
……な、なななんかっ、
さっきより座ってる距離が近くなってませんか……ッ !?!?!?」
「そお?」
なかなか手強い君だけど
会話の後でそっぽを向いても、ほんのり頬が染まるのを、俺は知ってる。
照れているときは、下唇をきゅっと噛む癖があることも、俺にはお見通し。
だって好きだから。
甘くなくても
君が好きだ……。
「なぁ。そっちの、味見させて……」
桃色に染まる頬を啄ばみたくなるくらい近くでささやいてみた。
君は染まる
苺色に……
可愛い君を溶かすまで
あともう少し。
とりあえず【完】
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