終曲-Cry for you, RE-A-

3/8
前へ
/166ページ
次へ
家に戻ると、母は何も訊かず、それどころか腫れ物に触るようにレアを扱った。 妹は探るようにレアを見るが、問いただすこともしない。 話すきっかけをなくし、針の筵(ムシロ)に座らされている気がした。 手渡された真貴の名刺をまえに、ようやく電話ができたのは夕方だった。 レアの祈りが届くことはなかった――。 なぐさめるように降っていた昼間の雨はあがり、オレンジ色の光線のなか、堤防の上を危なっかしく歩き続けた。 警告するような不意打ちのクラクションも、望みを叶えてはくれなかった。 いつもの場所にたどり着き、海に足を向けて座る。 巡り合ったこの場所で、まさにあの時、祐真は不発弾をその躰に宿した。 レアから祐真を奪ったのは、何よりも祐真を必要としたレア自身だった。
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!

413人が本棚に入れています
本棚に追加