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家に戻ると、母は何も訊かず、それどころか腫れ物に触るようにレアを扱った。
妹は探るようにレアを見るが、問いただすこともしない。
話すきっかけをなくし、針の筵(ムシロ)に座らされている気がした。
手渡された真貴の名刺をまえに、ようやく電話ができたのは夕方だった。
レアの祈りが届くことはなかった――。
なぐさめるように降っていた昼間の雨はあがり、オレンジ色の光線のなか、堤防の上を危なっかしく歩き続けた。
警告するような不意打ちのクラクションも、望みを叶えてはくれなかった。
いつもの場所にたどり着き、海に足を向けて座る。
巡り合ったこの場所で、まさにあの時、祐真は不発弾をその躰に宿した。
レアから祐真を奪ったのは、何よりも祐真を必要としたレア自身だった。
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