413人が本棚に入れています
本棚に追加
序奏
おれを襲うディレンマ。
無償の愛を受ける喜び。
傍にいてほしいと望む心。
後悔という名の断罪。
罠を仕掛けたのはおれだった。
兄としてではなく、男として触れたかった。
深く淀んだその傷痕は癒やされることのないまま、季節(ﾄｷ)は廻り合うために移りゆき、おれを導いた。
その結末はけっして望んだものではない。
ただ、廻り合った彼女の存在は追い求めた安住の地であり、わずかな時間であっても、凝縮された無限の至福に包まれた。
おれが懺悔(ｻﾞﾝｹﾞ)するのは、傍にいてやれなかったこと。
彼女が真に生きたいと願うまで……
せめて――。
最初のコメントを投稿しよう！