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ギリギリと掴まれた手首よりも、心が痛かった。
「離しなさい。こんなことをして、許されると思っているの？」
本当は、今にも崩折れそうな恐怖を感じている。
ーーー怖い。
けれど、比佐の抑揚のない声は、少しだけこの小生意気な女を脅してやろうと考えていた吉田の神経を、逆なでした。
「は？お前誰にそんな口聞いてんの？お前の口を塞ぐことなんて、簡単なんだけど？」
まるで獰猛な生き物のように歯を剥き出して嗤う。
自分が今から何をされるのか、朧げながら悟った比佐に、吉田は追い打ちをかけた。
ぺたりと、彼の汗ばんだ手が彼女の脚に触れた。
その瞬間叫び声を上げようとした口は、分厚く硬い手のひらで抑えつけられる。
ぞわぞわと何かが這い上がってきた。
どんなに振りほどこうとしても、吉田には叶わない。
もうダメだーーー。
比佐は、ぎゅっと目を閉じた。
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