彼女のキモチ

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「………なにしてんの?アンタ。最低だな、犯罪者じゃん?」 威嚇するような低い声に、比佐と吉田は同時にビクリと身体を揺らした。 塞がれていた口から気持ちの悪い感触が離れていく。 「………アンタ、2ーA吉田だろ?彼女には申し訳ないけど、証拠、ちゃんと録画してあるから。………二度とこの子に近づくなよ。早く行け」 何か言いたそうに顔を歪めた吉田は、比佐の身体を押しのけると教室の扉を荒々しく叩きつけて出て行った。 「………大丈夫?」 「ええ、ありがとう。篠田くん、どうしてここに?」 今は部活中であるはずのサッカー部の彼が、何故放課後の空き教室などにいるのだ。 篠田は肩を竦め、「ほらみろ、バレるに決まってる」と呟き頭を掻いた。 「まあ、うん。ごめん、たまたま通りがかった、ってことにしといて。………噂、もう聞いた?」 篠田の自分をいたわるような声音に、比佐は小さく笑った。 「ええ、聞いているけれど。あなたのお陰で、よくわかったわ」 篠田が意味ありげに笑い、今度こそ比佐も声を出して笑った。 比佐には、やらなけばならないことがある。
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