彼女のキモチ

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*** 視線を感じる。 訝しげなものもあれば、嘲笑に近いもの、好奇心丸出しのもの。 比佐はそれら全てを受け流した。 いちいち気にしていては、身が持たない。 しばらくすると、放課後の廊下にはもう誰も残ってはいなかった。 荒木はまだ出てこない。 入り口をずっと見ていたのだから、窓から逃げない限りは捕まえられる筈だ。 「永ちゃん。………何してるの?」 荒木は窓にもたれて外を眺めていた。 もっともこの教室から見える景色は………。 「ほら、あの席。比佐ちゃんの席。………知らなかったでしょ?」 荒木が悪戯が成功した子供のような顔で振り向く。 「………見てたの?」 「もちろん」 「……そう。…………もう、見ないの?」 狡い聞き方だと、言った瞬間に後悔した。 「比佐ちゃんは、どうして欲しい?」 だが荒木はさらに狡い答えを返した。 いつも優しげな彼の瞳が、何か大切なものを見つけた時のような煌きをみせる。 比佐は、ゆっくりと口を開きーーー。
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