彼女のキモチ

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「比佐ちゃん、帰ろ?」 今はテスト前で、全ての部活が休みになっている。 県内で好成績を残すサッカー部所属の荒木も例外ではない。 比佐たちの高校は進学校だった。 荒木は比佐のひとつ下の学年だが、童顔で背も低い彼女と並ぶと、必ず年上に見られる。 二人の身長差は、ものさしで測ったようにぴったり30センチ。 悔しい、と。 並んで帰るたびに思う。 昔は自分とほとんど変わらなかった癖に。 つい睨みつけるように見上げると、決まって荒木は優しく微笑み返してきた。 「なに?比佐ちゃんまた睨んでる」 繋がれた右手があたたかい。 昔の小さな手のひらではなく、自分の手をすっぽりと覆い隠すような大きな手だ。 ゴツゴツして、骨張っている。 いつのまに、こんなに自分との差がついてしまったのだろう。
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