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ゲルマニアはエウロペ連合の中心国家で、その国の言葉で「シュルス」は「結論」という意味だった。エウロペが総力を挙げて開発中の情報統合型無人ロボット兵器である。テルがいった。
「いや、無理だろ。ロボット兵器の肝(きも)は制御にある。ミサイルや銃弾はもういくとこまでいったからな。サイバネティクスが勝負を決めるんだ。やつらがいくら兵器のIT化を進めても、こっちには無時間で情報を伝達するクロガネがある。やつらにはない。この差は決定的だ」
ジョージは食堂を見わたした。
「窓際のテーブルが空いてる。いこう」
はめ殺しの窓は狙撃防止の分厚い積層ガラスでできている。その向こうには秋の日を浴びて稜線を鋭く空に浮かべる不二山の威容が薄青く広がっている。タツオは口にせずにいられなかった。
「ほんとにそうかな。一対一なら確かに『須佐乃男』のほうが『シュルス』より有利だろう。だけど、相手が2機3機になったら、どうだろう。氾とエウロペの物量は圧倒的だ。こちらにはクロガネは2機分しかない」
テルががしゃりとテーブルにアルミの盆をおいた。打ちつけるように椅子(いす)に腰を落とす。
「やめとけ、そいつは国家機密だ。本土防衛戦で徹底的に氾=エウロペ連合軍を叩いて、『須佐乃男』の威力を敵の骨の髄(ずい)まで教えこむ。その後、攻撃型『須佐乃男』を送りこみ、やつらの喉笛(のどぶえ)に突きつけて、日乃元に有利な条件での停戦協定にもちこむ。賠償金を踏んだくっても、東南アジアの植民地をいくつかもらってもいい。そいつがこの戦争の終わらせかただ」
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