実(み)

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「お母さんも一緒に行こうか?」 合格発表の朝、お母さんが朝御飯を食卓に並べながら言った。 多分僕がダメかもしれないって言ってたからだと思うんだけど、「友達と行くから」と断った。 親と見に行くなんて、余計に緊張しそうで嫌だ。 C校に着くと、既に合格者の番号が張り出されていて、掲示板の前では色んな表情の人がいた。 ごくり、と唾を飲み込む。 ここまで来たら、見るしかないよね。 僕は人を掻き分けて掲示板の前まで進み、自分の番号より少し前から順番に見ていった。 もうすぐのはず…… 受験番号が近づくにつれて、ドキドキが激しくなる。 「あった!」 思わず叫ぶと、「おめでとう」と誰かに言われた。 僕に言ったの? 疑問に思いながら振り返ると、消しゴムをくれた人が立っていた。 「ありがとう」 僕が笑顔で言うと、彼は固まってしまった。 少しだけ顔が赤い。 そして、小さな声で「俺も合格」と言った。 「おめでとう。これからよろしくね。 僕は、三原 陽斗(みはら はると)。君は?」 「松村 敦(まつむら あつし)」 「僕が合格出来たのは、松村君が消しゴムをくれたからだよ。 本当にありがとう」
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