【コインランドリーの先客】

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俺は、洗濯物を詰め込んだカゴを手にアパートの部屋から外へと出た。 同時に…モワッと湿気を帯びた不快な暑さが体にまとわり付く。 「ったく…今夜も蒸し暑いなぁ」 今は、夏真っ盛りの八月上旬。 俺は連日連夜の猛暑に、ほとほとウンザリしていた。 腕時計を見ると…夜の九時。 「さて。とっとと終わらせるか。洗濯」 俺は、近所に有る行き着けのコインランドリーへと足早に向かった。 そのコインランドリーは、俺のアパートから歩いて二十分位の所に有る。 店内に入ると…途端に心地好い冷房が体を包み込んだ。 「おぉ、涼しいなぁ」 俺は、その涼しさに歓喜の独り言を呟きながら中に入った。 このコインランドリーは広さ的には、ちょうど小学校の教室の半分くらいだ。 入口から見て、向かって左側の壁沿いに洗濯機が四台並んでおり、 その真向かい…つまり向かって右側の壁には丸窓の縦型乾燥機が、やはり四台並んでいた。 正面には、飲み物と洗剤の自販、そしてその隣には新聞や雑誌が入った棚が有る。 店の中央部分のスペースには、正方形の大きなクッション腰掛けが『でん』と陣取っていた。 今夜の店内には… 一人の先客が居た。 腰掛けの右端に座り、携帯電話で誰かと話をしている様子の…長い髪で顔はよく見えないが、見た感じ若い女の様だ。 女の前で、一台の乾燥機がガコンガコンと音をたてて稼動していた。 こういう店で若い女性とツーショットと言うのは場所が場所だけに、なかなかに気まずい物が有る。 俺は、その先客の女をあまりじろじろ見ないよう、足早に洗濯機の前へと行くと、その中に下着類と洗剤を放り込んで蓋を閉じ、お金を入れた。 途端に洗濯機が稼動を始める。 俺は、洗濯機の前の腰掛けに座ると自分の携帯をいじり始めた。 先客の女とは、ちょうど背中合わせに座っている事になる。 「ねぇ。こんな怪談、知ってる?」 と、背後から電話で話す女の声が聞こえて来た。 特にBGMも流れていない店内… 洗濯機や乾燥機の稼動音が聞こえる中、女が携帯で話す声も嫌でも聞こえて来た。 「結構、怖い話なんだからぁ」 どうやら… 女は、電話の相手に怪談話を披露しようとしてるようだ。 まあ季節柄、そういう時期か…。 こいつは、暇潰しに怪談話が聞けるな…。 と、怪談好きの俺は、それとなく女の声に聞き耳を立てた。 彼女が話し始めたのは… 大体、こんな話だった。
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