【コインランドリーの先客】

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俺は… その先客の女が話す怪談話に聞き入っていた。 「これで…私の話は終わり」 俺は、彼女の話に聞き耳を立て続けながらも、自分の洗濯とすすぎを終え、洗濯機の中から下着類を取り込み始めていた。 女の話が終わったので、俺は聞き耳を立てるのを止め、回収した下着類を向かいの乾燥機…女が使っている乾燥機から少し離れた所に有る機械に放り込んで、お金を投入した。 お金を入れた途端、乾燥機は音をたてて回り始め、俺は腰掛けに座った。 女は、急に声のトーンを落とし、ボソボソと呟くように携帯に向かって引き続き、話をしていた。 やがて… 乾燥機が止まり、俺は立ち上がって丸窓を開けると中の下着類をカゴに詰め込み始めた…。 のだが… 俺は、少し妙な事に気付いた。 女の前で今も回り続けている、あの乾燥機…。 後から来た俺が乾燥を終えたにも関わらず… 彼女の前に有る乾燥機は、依然としてガコンガコンと回り続けている。 いくら何でも… 乾燥時間が長過ぎやしないか? 俺は少し気になって、その今も回り続けている乾燥機の丸窓を女に気付かれないよう、そっと首を伸ばして覗いてみた。 と… 俺は… ギョッとした……。 その乾燥機の丸窓の向こうで激しく回りながら、 チラチラと見えていた物は… 下着類などではなく… 一体の…人形だったのだ!! 本当にチラッチラッとしか見えないが… その形からすると… 恐らく、その人形は、フランス人形…。 人形は… 乾燥機の中でぐるぐると回り続けていると言うよりは… まるで丸窓の向こうで、デタラメな動きで激しくバタバタと踊り狂っているように… 俺には、見えた。 俺は、思わず… 携帯で話している女の方にも目を向けてしまった。 と… 再び、俺はギョッとした!! その女の半袖シャツから伸びている腕… 火傷を負ったような物凄く酷い『ヒキツレ』が… びっしりと腕一面を覆っていたのだ!! まさか… この女と、この人形… 『今の怪談話』に出て来た………。 俺は! 急に背筋に冷たい物を感じ、そそくさと自分の下着類をカゴに詰め込むと、コインランドリーから飛び出した! 外に出ると同時に… 再び、モワッと湿気を帯びた不快な暑さが体にまとわり付いた。 …あれ? そう言えば… あのコインランドリー… いつも、あんなに冷房が効いて… 『ひんやり』としてたっけか………。
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