第1章

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夜道。 ぽつぽつと灯る街灯を見上げて、町の明るさに追いやられて、人に存在を忘れられた星たちを見上げて。 滲む視界を、溢れる涙を拭うこともせず、歌っていた。 「ちょっと かっこわるいけど」 有名なアーティストの有名な曲。 「かみきるなら つきあうよ なんて わらっちゃった……じゃない」 今の心情にぴったりだと選曲したけど、間違いだったかも。 こんな明るい歌で明るい気持ちになれるなんて私にはむりだ。 むりだった。 今だけかな、時間が経てば平気になるのかな。 きっとそう。今だけなの。時間が経てば忘れられるの。 この胸の痛みも、あの人の顔も、あの人との思い出も。 平気になる。そう、言い聞かせる。 言葉は言霊だから、言い続けたらきっと本当になるよ。 そう、私に教えてくれたのは、誰だったっけ……?
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