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・・・女は早速その指輪を指にはめるとうれしそうに笑った。
そして、俺の指にも早く付けろと催促し、俺が付けた指を見てまた無邪気に笑った。
「ねぇ、なんかお礼したいな。」
女はいきなりそう呟いた。
『お礼なんか要らないよ。』
俺が首を横に振ると、女も首を横に振った。
「だぁめ、―――納得出来ない。体で払わせて…」
急に女が本気の顔になった。しかし、俺のプライドが許さない。
『ダメだよ。そんなお礼いらない。』
ぷぅっと女の顔が膨らんだ。しかし、すぐに元の笑顔になった。
「ぢゃぁ、そこらのファミレスで睡魔が来るまで語りあかそうぢゃなぃ?」
俺が頷くと、女は俺と手を繋ぎ、近場のファミレスに向かった。
―――…それからファミレスでずっと喋った。
2時間もすると、そいつは寝ちゃって、30分後ぐらいには俺も寝ちゃってた。
それで、店員に起こされたと思ったらそいつは居なくて、
かわりにテーブルの上に残された紙ナプキンに
“ありがとう
1日限りの彼氏さん。”
って書いてあった。俺は思わず『まだ何もお礼してもらってねぇぞ』って心の中で何回も言ったんだ。
でも、どこを見渡そうと彼女の影は、もうそこにはなくて、今更気付いた感情に、ため息吐きながら指にはまったシルバーリングを見つめてしまう自分に苦笑いしていたんだ。
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