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「変なのー!」  新宿駅構内は広い。冬に向けてじわじわと色彩を失い出した十一月の雑踏の中、浮かび上がるように聞こえてきた声に、神月未来(こうづきみらい)の歩みはぎこちなくなる。そうして、斜め前を行く姿勢の良い背中との距離があく。  仙太さん。  と、もしもひと声掛けたなら、六期上の真面目な主任、仙太一成(せんだいっせい)はすぐに気づいて止まってくれるだろうに、未来にはそれができなかった。  はぐれる一歩手前、十メートル近く離れてしまってから、ようやく仙太はハッと後ろを振り向いて立ち止まる。そしてあちこちを目で探す。
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