パフェの魔法

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来た!! カランカランと喫茶店のベルが鳴って、制服姿の彼が入ってくる。 いつものように店長さんに注文を通すと、私の隣の客席に腰をおろした。 「なに読んでるの?」 テーブルから身を乗り出して、私の手もとを覗き込んでくる。 「推理小説だよ。店長さんから借りたの。」 「へぇ。本貸してもらえるくらい仲良くなったんだ?進展してるじゃん。」 私の恋を応援してます!的な笑顔を向けられて、作り笑いで返事する。 ほんとうは、そんな反応してほしいわけじゃないんだ……。 窓ガラスから差し込む木漏れ日が、色素の薄い彼の髪をキラキラと輝かせる。 色白の肌に、優しげな顔立ち。 万人受けする人懐っこい性格。 同じ高校のクラスメイトである彼は、私をはじめ、女子学生みんなが憧れる、王子様だ。 「でも、店長のどこがいいのー?おっさんじゃない?」 「誰がおっさんだ!苺パフェ、没収するぞ。」 ガコンとテーブルに乗せられる苺パフェ。 顔をあげると、聞き捨てならないと言わんばかりの店長さんが、彼を見下ろしていた。 「えー?28でしょー?ひとまわり違うもん。」 ケタケタと笑いながら、生クリームを口に運ぶ彼。 私も生クリームになりたい!とこっそり思ったところで、去り際の店長さんと目が合った。 パチンと目配せされて、顔が赤くなる。 うん。 店長さんにはバレてるんだ。 私の気持ち。 「で?店長のどこが好きなの?」 もう一度同じ質問をされて、返答に困る。 本当はあなたが好きだけど、カモフラージュで店長さんを好きって嘘ついた、なんて……言えるわけない。 黙ったままうつ向いていると、突然視界の端から、たっぷりの生クリームを乗せた銀のスプーンがやってきた。 「食べる?」 彼の提案に目を丸くする。 「や、だって……」 それ!あなたが使ったスプーン!! 頬を熱くしながら全力で拒んでいると、眉を下げた彼が微笑んだ。 「食べてよ。このパフェ、魔法かかってるから。」 「……魔法?」 キョトンと首を傾げる私に彼が言う。 「うん。 君が店長じゃなくて、俺を好きになる魔法。」 そんなこと言われたら、勘違いしちゃうよ?王子様。 ねぇ。 食べる前からその魔法にかかってる私は、食べたらどうなるのかな? fin.
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