scene.2

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毎日最高気温が更新されるといった日々。 学校が夏休みに入っても、受験生にとって休みなどない。 ──というのが普通の高校三年生だけれど、私、香月舞には当てはまらなかった。 何故なら、私は大学附属の私立高校に通っているからで、現時点で外部の大学を受験する予定はなかったし、よほど成績が悪い、出席日数が足りないということがない限り、進学はできる。 という訳で、私はのんびりとした夏休みを送っていた。 お気に入りのサンダルが壊れてしまったこともあり、新しいサンダルを物色しに駅前まで買い物で出ていた。 一回で欲しいものに出会えることなんてなかなかないのに、今日は運よくすぐに見つけることができてご機嫌だ。 思わず嬉しくなって、買ってからすぐにサンダルを履いて家まで帰ることにした。 家の近所にある学校──蘇芳館高校の前を通ると、たくさんの女の子がたむろしているのが見えた。 その方向を確かめて納得する。 彼女達が集まっている場所は、テニスコートのあるエリアだった。 夏休みということもあり、みんな私服だ。思い思いに可愛く着飾っているのがわかる。 「テニス部か…見たいな」 今なら、私が混ざってもわからないじゃないか!と思い立つ。 という訳で、私は初めて蘇芳館高校内に入ってみることにした。 蘇芳館高校は私の通う神崎女学院とは違って共学だ。 進学校でありながら、スポーツも強い。特に有名なのは、サッカー部と女子バレー部、そして男子テニス部だ。 そして、私の幼馴染、篠宮斎の通う高校だった。 本当は、私も蘇芳館に行きたかったんだけどなぁ…なんて思いつつ、テニスコートの方へ向かう。 「え…」 コートに近づくにつれ、女子の数が増えていく。 一番見やすい位置なんて、どこのライブハウスだ?!と思ってしまうレベル。 …蘇芳館の女子って凄い。 この暑い最中、テニス部の練習見に学校へ来るんだもんね。 通りすがりの私とはえらい違いだ。 彼女達の熱に圧倒され、私は少し離れた位置で見学させてもらうことにした。 スパーン…パーン…スピードを増したボールがコートに叩きつけられる音。 その鋭い音を聞いていると、ふと懐かしくなってしまう。
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