scene.2

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プレーも凄かった。 練習にも関わらず、目が離せなかった。 綺麗なフォームで繰り出されるショットは速くて鋭い。 彼のプレーが終わった後、私はその場所から離れた。 喉が渇く。 声援を送っていた訳ではないのに、必死で声を荒げて応援した後のような、そんな感じ。 気持ちが高揚している。そのせいで、私の喉はカラカラになっていた。 私は自動販売機に向かい、飲み物を買って傍のベンチに腰掛ける。 「南条……祐、か」 「何?」 「!!!!」 声がした方を向くと、なんとご当人がいるじゃないかっ! ジュースを飲みながら、こちらに向かってくる。 し、しまった! 「あんた、誰?」 「え…えと…」 「……ま、誰でもいーや」 は、はい…? 「テニス、すんの?」 「…少しね」 「ふぅーん」 「私がテニス経験者って、なんでわかったの?」 不思議に思って尋ねると、南条君はニヤリと笑い、言った。 「プレーを見る目が違った」 「目?」 「そう。周りにいる人達は、別の所を見てるからね」 「…なるほど」 周りの女の子達は、プレーを見ていても目はどうしても人物を追ってしまう。 そりゃそうだ。お目当ての人が見たいが故に、あそこにいるんだから。 でも、私は違っていた…そういうことか。 「プレーしながら、よくそんなとこ見れたね。余裕~」 「別に。コートに入る前から気になって見てたから」 「…は?」 私は目を丸くして、南条君をマジマジと見つめた。 「…部外者がいるって?」 「そうなの?」 「え…いや…(しまった)」 「そんなの、わかる訳ないじゃん」 ホッ、よかった。 じゃあ、なんで気になったんだろう? 「私、何か変?目立つ?」 「別に」 「…じゃ、なんで?」 南条君は、またもやニヤリと笑う。 改めて私を真っ直ぐに見据えると、彼は興味深々といった表情で言った。
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