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「部長の知り合い?」
「…は?」
思わず大きな声が出た。
だって、いきなりここで斎のことを出されたもんだから。
「な…なんでいきなりここで斎のことが出てくるの?」
「斎…か。ふぅ~ん」
「うわっ!!」
急いで口を押さえたけれど、間に合っていようはずもなく。
私はまるで不審者のように、キョロキョロ視線を彷徨わせる。
そんな私を見て、南条君は合点がいった顔で頷いた。
「やっぱ部長の知り合いか」
「…なんでわかったの?」
「気付いてなかったの?」
「何に?」
私の言葉に、南条君は軽く肩を震わせる。
「部長、気の毒~っ」
「ちょっ!!なんでよっ!」
私がムキになって詰め寄ると、南条君はまだ少し笑いながら、こう答えた。
「部長がフェンスの方を気にしてるから、変だと思ったんだけど」
「…え?」
「で、俺も見てみたら、あんたがいた」
「……よく私だってわかったね。周りにいっぱい人がいたのに」
「だってあんた、周りの人達とは雰囲気違ったから」
「…」
「あんなたくさんの人がいても、部長はすぐにあんたに気付いたのに、あんたは部長のこと気付かなかったんだ」
「…」
…何も言い返せない。
いや!斎が本当に私に気付いていたかどうかなんて、わからないし!
私が言い返そうと勢い込んだ時、低くてよく通る声がした。
「南条」
私と南条君が振り向くと、そこには不機嫌そうな顔をした斎がいた。
「斎っ」
「南条、休憩時間は過ぎているぞ。コートに戻れ」
「はーい」
南条君はジュースの缶をグイと傾けると、一気に中身を飲み干した。
そして、のんびりとコートに向かう。
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