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キッチンでエプロンを纏うとカイに腕を引っ張られる。
その腕を振り払う。
「待ってて、コロッケ作るから…」
「リカ!」
振り向きもせずジャガイモを洗う。
「リカ、こっち向けって。」
「カイはコロッケ好きだもんね。あのスーパーのコロッケより、叔母に教えてもらったコロッケの方が美味しいから期待していいよ。」
身体ごとカイの方を向かされる。
「リカ…俺が怖いの?」
「そんな訳ないじゃん。」
「さっきは…話せるとこまででいいって言ったけど、本当は全部聞きたい。お前のこと全部知りたい。」
カイの真っ直ぐな瞳に映る私が怯えているように見えた。
「言いたくないこと…言わせるのは悪いと思ってる。けど、全部知ってからリカを守りたい。俺は…もう逃げないから、ちゃんと向き合いたい。」
カイの気持ちが私の胸に流れ込んでくる。
カイを信じてあげたい…でも…
「お前の痛みも苦しみも全部、俺に寄越せ。俺が全部飲み込んでやるから…」
「カイ…カイが好き。だから…言えないこともあるんだよ。」
「…お前それで俺とやっていけるの?」
カイから目を逸らす。
「俺が信じられない?」
「違うっ!カイに…嫌われたくない…」
「お前の何を知っても…俺はもうお前を離さない!」
両肩をしっかり掴まれる。
全てを見透かすカイの瞳が、本当は全てを知っていて私を試しているようにも感じた。
「カイ……私は…私は…」
試されているの?
カイを信じて全てを話すのか…やっぱり話せないと言えばカイを信じていないと思われる?
「私は……私の身体は、汚れてるの…。私…小学校の時から…い、いろんな男の人に…」
竹内の言葉を思い出して身体が震えだす。
『何人もの男達がお前を苦しめて楽しんだ気持ちがわかるよ…』
「か…カイ…っ…」
私をきつく抱きしめてくれるカイ。
「そいつらが憎いか?俺にどうして欲しい?」
「えっ…」
「そいつらを殺してくればリカの気は晴れるのか?」
「違うっ!」
「俺もそいつらと同じか?」
「違うよ!カイ!」
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