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濡れた私の手をタオルで拭うと流しっぱなしの水道を止める。
私の手を引きソファに座らせると向かい合う。
「俺なんかで…リカの痛みや苦しみを全部消してやることができるんなら、そうしてやりたい。けど…俺も弱い。」
カイのタトゥーだらけの手が私の手を優しく握る。
「お前が必要なんだ。だから二人で乗り越えたい…」
少し照れたような顔で頭を掻く。
「あー!なんて言っていいのかわかんねーけど…俺を信じてくれんなら、お前の闇を全部ぶち壊してやる。」
恐る恐るカイの頬に触れる。
「お前は汚くなんてない!汚れてなんてない!だから自分のことそんな風に思うな!」
「カ…イ…」
「お前は…綺麗だ…心も、身体も全てが…」
カイの唇が震える。
「お前は俺が出会った人間の中で一番綺麗だ…そんなお前に…俺が触れていいのか、俺も怖かった。」
私の頬にそっと触れるカイの指。
「でももう耐えられない…お前じゃなきゃ…お前の全てを俺にくれ。」
一生懸命伝えてくれるカイの気持ちに心が満たされていく。
ボロボロだった私の心の傷がカイの言葉で埋まっていく。
ーーー今わかった。
「私は…カイに出会う為に生まれて来たんだね。」
「リカ…」
そうだ。私が痛くても怖くても苦しくても悔しくても、それでも刃向わず生きることを切望したのは…今日この日の為なんだ。
大好きな人に、私の全てを捧げる為に…生きてきたんだ。
ずっと、小さな頃から…カイに会う為に、いつか出会うカイに会う為だけに生きてきたんだ。
カイに会う度に、カイに抱き締められる度に死んでもいいと思うのは…全てをカイにあげたいからなんだ。
私の中のあの部屋のカーテンが全て開いた。
あの暗い部屋が明るい陽の光を受けて膝を抱えていた私が眩しさに顔を上げた。
そして私は立ち上がり、明るい陽の光を身体に浴びて両手を広げた。
「カイ、私の全部を…カイにあげる。」
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