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郁子の誘いを断り、その日は父のマンションに泊まることにした。
広いリビングに和室の客間、ベッドルームが二部屋に閉め切ったクローゼットと小さめの本棚だけの部屋がある。
クローゼットを開けるとあっ!と声が出た。
本当にあるんだ…。
私と同い年の子たちの卒業アルバムのコピー。
その数は普通じゃなかった。
北海道から沖縄まで小学校、中学校のアルバムのコピーが数えきれない程収納されている。
ちょっと怖いくらいだ。
それでも父が本当に必死に探してくれていたと思うと少し嬉しかった。
私が卒業した小学校の卒業アルバムもある。
3歳になる前に離れた私の顔はわからなかったのかな。
見つけてもらえなかった寂しさと悔しさが込み上げる。
クローゼットを閉め、部屋の片隅の本棚に古いアルバムがあった。
そこには私が産まれてすぐの写真と、三人一緒の家族写真があった。
母親の顔は穏やかで、優しく父に微笑んでいる写真が多かった。
その母があんな風に変貌してしまうなんて、誰も思わなかったんだろうな。
親が子供に虐待をするってどこからくるものなんだろう。
マチさんが言っていた、私の知らない祖父が暴力を振るう人だったと。
嫌な思いを…痛くて辛い思いをしたなら、自分の子供にはそんなことはしないと思うものじゃないの?
何かがその思いさえ乗り越えてしまうの?
怖い…怖くて仕方ない。
病人の父に投げつけた花束…、私の中にも凶暴な血が流れている。
もし…私もそうなってしまったらどうしよう…
恐ろしくなってアルバムを棚に戻す。
ほんの少しだけ閃いた考えを打ち消すように首を振った。
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