Bright room

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カイは一曲歌ってギターを男に返す。 握手を求める男に応じるカイ。 私はそれを呆然と見つめた。 心臓が激しく鳴り響く。 私の横を通り抜けて歩いて行くカイ… えっ? 振り返るとカイも振り返ってこちらを見ている。 私の四、五歩先にカイがいる。 カイ…だよね? お互いの顔をじっと見つめ合う。 まるでここだけ時間が止まったみたいに…瞬きさえできない。 帽子のつばを後ろに回してこちらに歩いてくるカイにどんどん早くなる心臓の音。 私の目の前に立ち顔を覗き込むカイ。 「リカ…だよな?」 「カイ…」 フッと口元が動いて、私はカイの腕の中に閉じ込められる。 ああ…やっと、会えた… 涙がじんわりと頬を濡らす。 「会いたかった?」 カイが囁く。 凄く!凄く会いたかったのに…からかわれている気分。 「ぜっ、全然っ!」 声が裏返る。 「あっそ。」 一層強く抱き締められて胸がぎゅうっと締め付ける。 「痛いよカイ…」 「俺は抱き締めたかった…ずっと…お前を…」 カイの声が身体中に喜びを与える。 ただ、抱き締められて…声を聞いているだけなのに…立っていられないくらいの快感に浸る。 なんて…心地いいんだろう。 こんな幸せは味わったことがない。 もう死んでもいいくらいに幸せだ。 まるで映画のワンシーンの様な再会。 私達はどんなに離れていても…運命で繋がっているんだって感じる。 「カイ…会いたかったよ。」 ふふっと笑うカイ。 「だろ?」
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