Bright room

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「カイ…いつ帰って来たの?」 タバコに火をつけて深く吸うとこちらを向く。 「昨日の夜。」 「アメリカ…どうだった?」 ふふっと笑うカイ。 「そんなん聞きたいの?」 顔が赤くなったのがわかる。 「き…聞きたいよ。カイのこと全部…」 「お前は?男いるの?」 大袈裟なくらい首を振った。 「だっせー。」 「いた時もあったもん。」 「あっそ、ふーん。」 不機嫌そうにタバコを空き缶に突っ込むカイ。 自分で聞いたくせに… 「カイは?今…」 私…何が聞きたいんだろう。 そんなことを知りたい訳じゃない… 「好きな女がいる。」 「えっ…」 一瞬誰かに殴られたような衝撃が身体を走った。 真っ直ぐ前を向いて目を細めるカイ。 「気が強いふりするくせに泣き虫で…俺がいないと死んじゃうヤツ。」 それって… ゆっくり私の目を見つめるカイの瞳に囚われる。 「俺じゃなきゃダメなくせに、よく他の男と付き合えたな…」 「っ、それは…」 「なに。」 「…記憶…失ってて…、私あれから沢山あって…」 私の手をぎゅうっと握るカイ。 「話せるとこまででいいから、話してみ?」 「カイ…」 大丈夫って言ってるみたいな顔で頷くカイ。 なんだか前より大人っぽくなったカイにドキドキした。 「時間…いっぱいかかるけど、いい?」 「じゃあ、クリスマスの買い物してからな。」 「えっ?!」 私の手を取り歩き出す。 「クリスマス…?」 「お前クリスマスも知らないの?」 「し、知ってるよ!」 「へー、なんの日?」 「キリストの誕生日…」 「うん、んで?」 「キリスト教じゃないから…よくわからないけど、チキンとケーキ食べる日?」 「くくっ、ニワトリ食うの?」 「えっ?」 笑い出すカイに私まで笑ってしまう。 カイがキリスト教だとは思えないし…クリスマスにはしゃぐタイプにも見えない。 だいたいクリスマスにいい思い出なんてない。 「カイはクリスマスにいい思い出あるの?」 「ない。だからお前と作んの。その為に帰って来たんだからな。」 驚いてカイの顔を覗き込む。 「本当?」 鼻で笑うカイ。 「どうだろな。」 「もーっ、本気にしたのにー!」
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