お題《すずらん》

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お題《すずらん》

勉強机の上には プレゼントが一つ 不安げに置かれていた 素直になれない 思春期の少年 感謝の気持ちを 伝えられない 初めて買った プレゼント うまく渡す 自信はなくて ベッドから それを眺めながら ため息を零した ちりん ちりりん 人には聞こえない 眠りを誘う音 優しく部屋に 響かせる ちりん ちりりん 鈴蘭のステッキを 振りながら 眠りの妖精は 少年の手助けを したいと思った ちりん ちりりん 穏やかな気持ちで 優しい言葉で 初めてのプレゼント 渡せるように ちりん ちりりん 優しい音を知らぬまま 少年の意識は 曖昧な闇にのまれて 眠りの世界へ ちりん ちりりん 寝息と混ざるその音は 少年を激励するように しばらく部屋に 響いていた
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