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不安げな顔で佇むしかない。
と、
そんな私と悠馬の瞳が合って、
「繭子さん……」
微かにそう呟いた様に見えた。
「―…と、もうこんな時間だ。繭子さん、楽屋に顔を出したいと思うのでそろそろ行きましょう」
誰もいなくなった二階席を見て、「さあ、一緒に」と柘植さんは私を連れて行こうとする。
「い、いえ……私は―…」
とてもじゃないけど今、柘植さんと楽屋に訪問することなんて出来ない。
それなのに私の肩を抱き、ここから連れて行こうとする柘植さん。
でも私は……
これ以上、柘植さんとは行動を共にするなんて、悠馬は―…
そんな想いで悠馬を見つめると、
「駄目です」
という声の後、柘植さんの腕から離れることが出来た。
「あ……」
悠馬が私の腰を抱き寄せて、柘植さんの腕から逃してくれていた。
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