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「あの、私、柘植さんの車に着替えを預かってもらっているままで―…」
「着替え?」
「今日は学校の帰りに柘植さんと偶然会って、メイクアップモデルをした時の写真を受け取るために会社まで行ったんだけど―…そしたら、仕事の一環で舞台を観に行くからって言われて……それで……」
ここに柘植さんと来るまでの経緯を説明しているけれども、どうしても言い訳がましい伝え方になってしまう。
もちろん、そんな言い訳をしたって悠馬には関係のないことなんだろうけど―…
ただ、悠馬は優しい。
柘植さんに楽屋に誘われて困っている私に助け舟を出してくれた。
「服ならまた新しいものを俺が買うよ」
「悠馬が……?」
「だから、着替えを取りに行くなんて理由であいつとは会わないで」
冷たい悠馬の口調。
〝会わないで”なんて言葉は、もしかして妬いてくれているの?なんて期待してしまうのだろうけど、
そういうことじゃないって分かる。
あの一言を聞いてしまった今、
悠馬の中に強くある気持ちは柘植さんへの特別な想いがあるから、って。
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