消したい夜

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「うーん……」 深い眠りの海の底に、かすかにアラームが響いてくる。 もう朝……? 二十九回目の誕生日を迎えたあたりから、朝が来るのが妙に早くなった。 目を閉じたまま重い頭を起こし、渋々腕を伸ばす。 まだ寝ぼけているせいか、枕元がやたらに広く感じる。 シーツもなぜかいつもよりすべすべだ。 あるはずの場所にあるべきものがなく、やみくもに手探りした私は、次の瞬間ぎょっとして目を開けた。 夢うつつに朦朧としていた頭が一気に覚醒する。 恐ろしいことに、私が掴んでいるのは目覚まし時計代わりにしている携帯ではなく、有り得ないもの──見知らぬ男の髪だったのだ。
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