消したい夜

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東条主任の後ろから顔を出した美人には見覚えがあった。 誰かと一緒なんて、聞いてない。 二人はにこやかに近づいてくる。 はっと我に返り、おかしな位置で止まっていた手を下げ、ごわごわの顔を笑顔に形づくった。 「遅れてごめんね。彼女の上がりが長引いてしまって」 「ごめんなさい」 「改めて紹介するよ。知ってるよね?うちの会社の受付の堀内さん」 「堀内美緒です。江藤さんのこと、東条主任からいつも伺ってます」 東条主任の隣で、彼女はとろんと蕩けそうに甘い笑顔を見せた。 “いつも伺ってます” ……そういうこと。 二人は会社の外でいつも一緒にいるということ。 空っぽの頭の中で、カーンと試合終了の鐘が響いた。
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