消したい夜

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彼女とは初対面ではない。 よく、東条主任と外出から帰ってきて受付の前を通過する時、「お疲れ様です」と声をかけられた。 疲れて引きずっていた足に喝を入れ、背筋を伸ばしてお辞儀を返しながらいつも私は考えた。 受付は華やかだけど、私は美人に生まれついても今の仕事を選ぶ。 半人前ながら、東条主任と一緒に仕事している自分を誇らしく思っていた。 その安っぽい対抗意識と優越感にピシリとヒビが入り、木っ端微塵に砕けた。 会社で一緒に過ごしている時間は誰より長い。 さりげなくアプローチしたし、可愛く見られようと毎日お洒落した。 だけど一番近くにいるアドバンテージがありながら、私は女の対象にならなかった。 仕事で認められることと女としての価値はまったく別物。 当たり前のことなのに、私は都合よく混同していた。
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