消したい夜

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まだ料理のオーダーすらしていないのに、この数分だけで私を打ちのめすのに十分だった。 もういいよと心の中で悲鳴を上げる。 もう十分わかったから。 昼間は作業着で隠れていたワンピースの胸元をメニューでもう一度隠す。 お洒落なんかしてくるんじゃなかった。 こんな張り切った格好、期待が見え見えだ。 盾のようにメニューを握りしめる私に、堀内さんが笑顔で話しかけてくる。 「一緒にお仕事してる江藤さんが羨ましくて、憧れてました。お喋りできて嬉しいです」 「いや、私は憧れるようなもんじゃ……」 持ち上げられると余計に惨めだ。 はは、とぎこちなく笑い返すのが精一杯だった。
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