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脱げたヒールに踵を押し込み、また歩き出そうとした私は、自分の格好を見下ろしてふとあることに思い至った。
東条主任は私の好意が迷惑で、牽制のためにセッティングしたとしたら……?
足元の地面がぱっくり割れて深い裂け目に落ちたみたいに、目の前が真っ暗になった。
自分の気持ちが、好きな人に鬱陶しがられていたなんて。
自分の存在さえも恥ずかしく思えて、いたたまれなくなった。
こぼれた雫を指先で拭い、もう泣くまいと夜空を見上げる。
子供の頃は、大人になったら好きな人と結婚するんだと当たり前に信じていた。
今、そんな夢は星よりも遠い。
私以外のみんなは恋を手に入れ、幸せになっていくのに、どうしてなんだろう。
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