消したい夜

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美人じゃないけれど、ひどく不細工な訳でもない。 恋愛小説に出てくる干物女みたいに、努力を放棄している訳でもない。 なのに私は一番好きな人と一度も結ばれたことがない。 きっと顔とかじゃなく、女としての決定的な何かが生まれつき駄目なんだろう。 もうすぐ三十才。 ちょっと早すぎるけど、恋することを諦めたら、もっと楽に生きられるのかもしれない。 「もう、女やめよっかな」 踏ん切りをつけようとマイナス思考で自分をいじめてから、小さく声に出してみた。 それからワンピースの胸元をつまみ、これまで男性に誉められた唯一のポイント、胸の谷間を見下ろした。 もう出番はないんだろうな。 出番らしい出番もなかったけど。
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