消したい夜

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恐る恐る顔を上げた私は、目の前の背中に思わず見とれてしまった。 広い肩幅。 薄明かりが陰影を落とす、引き締まった肌。 海やプール以外でこんな理想的な背中を見るのは初めてだった。 情けないけれど、そもそも男性の裸の背中を見るのは久しぶりなのだ。 そこで私はすぐ現実に立ち返った。 布団からのぞく男の上半身は裸。 私も、裸。 「……」 無声で唸ると、再び布団に突っ伏した。 自分のしでかしたことを改めて突きつけられ、この場から消えてしまいたくなる。 早くここから出なければ──逃げたところで現実は消せないけれど、動転した私の頭に咄嗟に浮かんだのはそれだけだった。
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