消したい夜

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暗がりに慣れてきた目を凝らし見回すと、少し離れた肘掛け椅子に私のワンピースが見えた。 バッグもそこにある。 自分で掛けたのか、男が掛けてくれたのか分からないけれど、そんなことを思い出している暇はない。 布団を動かさないようそっとベッドから出たところで、視界がぐるんと回って一度転んだ。 私はかなり飲んでいたらしい。 分厚い絨毯のおかげで全く痛くはなかったけれど、ズシンと地鳴りを響かせてしまったせいで、ベッドから寝返りを打つ音が聞こえてきた。 お願いだから目を覚まさないで! 必死に念じながら、息を殺して這いつくばる。 それきりベッドが静かになったので、椅子の陰に屈んだままごそごそと服を身につけた。 ストッキングが見つからないので仕方なく部屋を這うと、ベッドの男が寝ている側にそれらしいものが何かと一緒に落ちているのが見えた。 絡まっているのは男のネクタイらしい。 手を伸ばしかけたところで男の咳に飛び上がり、神経が限界を迎えていた私は回収することを諦めた。
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