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時刻は午前二時。
大理石に響き渡るヒールの音に冷や汗をかきながら静かなロビーを横切り、深夜の街に逃げ出した。
お洒落のために選んだ薄手のワンピースに秋の冷えた夜風がしみて、昨夜の失恋の惨めな記憶が再び沸き起こってくる。
けれど、道の向こう側にコンビニの明かりを見つけた私は救われた気分になり、また勢いづいて走り出した。
どん底だと思っていた状況からさらに地獄を見ると、元のどん底が有り難く思えてくる。
ネットカフェの場所を尋ねて、始発までそこで凌ごう。
そうして全部なかったことにしよう。
あの男とは二度と会うこともないんだから──。
でも、運命というものは、往々にして予定通りには進まないものらしい。
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