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次の日から、奏一からメールが来るようになった。他愛ない内容ばかりだったが、
放っておけばよいのに、なぜか律儀に返事をしてしまっている自分に
気付き、ユイトは自分に内心で苦笑した。
『何で連絡先の交換なんてしちまったんだろう…』
とは言え、この街に来て友達らしい友達もいないので、こういう
何気ないやり取りが嬉しい様な気もしないでもなかった。
普段は、店の女性客にもメールをすることはないわけではないが、
大抵が”店に来てね”という営業も兼ねたものになるし、それはユイトではなくホストの”鳳城蓮”として行っていることだから、まるっきりのプライベートのメール相手ができたことが、新鮮に感じられた。
あの日から…元彼の橘浩一郎に別れを告げられてから、基本人を
信用していないユイトだったが、奏一のペースに巻き込まれそうになる。
そして、次の日曜日に奏一も仕事が休みだから一緒に昼飯を食べ
ようと誘われた。ユイトにとっては出勤前の腹ごしらえといったところだが、面倒だと言って最初は断った。しかし、奏一は「たまには日中
に外で飯を食べるのも良いもんだよ」と言って、押し切ってしまう。
ユイトも、ご飯を食べるくらいなら別にいいかと思った。
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