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ユイトは、首都圏に近い県で生まれ育った。だが、ユイトが就職した年に父が亡くなった。それは突然のことだった。中流家庭であり、
ユイトは何不自由なく育った。
しかし、父もまだまだ働けるという年齢に、ユイト一家に危機が訪れたのだ。元々母は体が弱く、父が亡くなった後はショックや疲労も重なり入院をしたりしていた。それでも、段々体調は回復し通常の生活ができるようにはなっていた。しかし、問題は金だ。葛城家の大黒柱を失い、母も仕事に出るのは無理だ。そこで、稼げるのはユイトのみ。
ユイトの下にはまだ小学生の弟と妹が1人づついて、ユイトが家長を務めなければ
いけなくなったのだった。
会社で働いている時、ユイトには恋人がいた。もちろん相手は男。
同じ部署の先輩で、優しい人だと思っていた。とっても大好きで、離れたくなかった。おおっぴらにできない関係でも、ユイトは幸せだった
のだ。
しかし、ある日その恋人から突然別れを告げられた。父の死から1カ月
ほど後のことだった。父を亡くしてまだ気持ちの整理も付いていないと言う時に、別れを告げてきた彼もどうかと思う。ユイトは精神的に
追い打ちをかけられ、自暴自棄になりかけた。だが、優しい母に諭された。恋人に新しい相手でもできたのかと聞いたら、「まぁ、そんなとこかな」と曖昧に告げただけに留まった。
それから、同じ部署に彼がいることが気まづくて仕方がなく、その上ユイトがその彼と付き合っていたとどこからか噂が流れてしまい、
ますます居づらくなって会社を退職したのだ。これから稼がなければ
と思っていた矢先だったが、ユイトは耐えられなかった。
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