52人が本棚に入れています
本棚に追加
それから、家族のためにも何とか稼がなければと思い、ユイトは
当てがあったわけでもないが、都心にやってきた。東京に来れば、
稼げると思ったから…。
職探しをしていて、気分転換にと言う事でバーで飲んでいると、最初
に入店したホストクラブのオーナーに声をかけられたのだ。
そこで、もしかしたらかなり稼げるかもしれないと考え、藁をも縋る
思いでホスト稼業を始めたのだった。
稼いだ金は多くを実家に仕送りしている。
ホストと言うと、たんまり稼いでいて蓄えられると思われがちだろう。しかし、
多くを稼ぐ『1000万円プレーヤー』と呼ばれる者がいる
一方で、売れなければさほど稼ぎが良いわけではない。
ホストだけの収入では足りず、犯罪まがいのことに走ってしまう同業者も
一握りではあるが、中にはいるのだとどこかで聞いたことがあった。
ユイト自身も、華やかな世界の中にいるとは言え、慎ましい生活
をしていた。
ホストクラブには、容姿に優れた男も多くいるから、ゲイである
ユイトにとっては天国のようにも思えるかもしれない。
しかし、ユイトは心に壁を設けていた。地元で恋人に捨てられてから他人は信用しなくなっていたから、
イケメンがいようが関係ないと思っていた。体の関係も持てなくなった。
さらに、ユイトは営業時に表情や心に仮面を被り、演技をしている
のだ。本来の自分とは全く違う、華やかな雰囲気を纏い、紳士的に女性を扱う
『鳳城蓮』を完璧に演じていた。周りのホストからは「俳優蓮」と
言われるほどだった。
最初のコメントを投稿しよう!