第1章

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「誰か助けてくれ」 私は全身ずぶ濡れになりながら、そう願った。 私は貴族だ。 なぜ身分ある我が身が、このような扱いを受けねばならんのだ。 だがこの場所で私は、 「身分など何の保証にもならぬ」 とでも言わんばかりの、敬意などまるで感じられない不当な扱いを受け続けている。 「誰か助けてくれ」 天を仰ぎ、もう一度その言葉を胸に唱える。 だが、その心の呟きに応える者は誰もいない。 翼なき我が身では、この魂の牢獄のような場所から飛び立つ事も叶わず。 助けを得られるアテなど、何一つとして存在しない。 心を侵食してくる絶望。 その足音を感じながら、私は自由などどこにもない、閉塞した空間の中で力の限りに声を上げた。 「誰か助けてくれ・・このままでは・・このままでは私は・・! 人間の手にかかり、《ころっけ》というヤツにされてしまうではないか・・!!!」
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