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2 日曜日
日曜日。
「え、今、何て?」
「ごめんね。じゃ」
最後のデート。緑葉の野菜をざっくりと切るように、簡単に終わった。
家に帰って、ヘビメタのアルバムをガンガンにかけた。脳天を突き破る重たいサウンドが、黒い煙をまき散らすように部屋を巡る。
「酔わなきゃ、やってらんねえ」
軽くヘッドを縦に振りながら冷蔵庫を開けて、アルコールを物色する。
「今の俺は、ライトなんかじゃねえんだよお」
ビールのラベルに意味なく当たるように、バタンと乱暴に冷蔵庫を閉めた。
狭いキッチンでくるりと後ろを振り返ると、キャビネットに目が吸い付く。最上段に、飾り物のように置いてあるスコッチのボトルを発見。ぐわっと手を伸ばす。
次の日は出張が入っていて、会社には出勤せずに直接研修会場へ行くことになっていた。
良かった。落ち込んでしなびた顔を同僚に見られずにすむ。研修会など、寝て過ごせば良い。
握ったウイスキーのボトルには、まだ中身が半分以上残っていた。ボトルのスクリューキャップをシャーと回して開ける。
アルコールの香りだあ?
昔誰かが垂れていたウイスキーに関する薀蓄など今は無視。ボトルに口を付けると、斜め上に目線を上げる。何かに急かされているわけでもないのに、グイグイと中身をのどに流し込んだ。
ベロンベロンになってやる。
ぐらいの勢いで、もらい物のスコッチをストレートで飲みまくる。うまいとかまずいとか、銘柄が何であるとか、そんなこともどうでも良かった。
そのうち、良い具合に何も考えることができなくなる。ガンガンにかかっていたはずのヘビメタのサウンドも、山の向こうへ隠れるようにだんだんと遠くなっていった。
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