3 月曜日

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 名まえに麻布の麻とあるから、高校に入りたての頃はよく「あさこ」と呼ばれていた。その度に「マコです!」と威勢よく言い返していた。何年前のことだろう。 「コージ、久しぶり。高校卒業以来だよね」  サンドイッチとドリンクを手に、彼女が近づいてくる。 「マコ・・・か?」 「か? ってナニよ」  感動の再会には程遠い、薄くて淡白な再会の言葉。別に良いだろう。マコだってまさかハグとかを期待していたわけでもあるまい。まずは座ろうと、フロアの一角に腰を下ろす。 「コージ、食べないの? サンドイッチ取ってきてあげようか」 「いいんだ、俺はジュースだけで」  マコは相変わらずはきはきしていて世話好きのようだ。高校時代は大勢の部員を抱えるサッカー部の名物マネージャーだった。  クラスでは学級委員を務め、三年のときの体育祭・文化祭も実行委員長として見事に場を仕切っていた。  俺は一応、クラスでは相方だったけれども、マコの横では名前だけのおまけようなものだったな。  遠い青春時代だけれども、何となく思い出すとそれなりに懐かしい。 「こーじ、仕事何やってるの?」 「IT関係で営業。SEとかじゃないから」  マコの勢いある性格は、高校時代とそれほど変わらないようだ。けれども、見た目は少し変わったかな。  高校の頃より髪が長く、少しほっそりした様に思う。化粧をした顔は初めて見た。若さはじけるすっぴんで駆け回っていた女の子が、今は大人のケアを施した肌を見せる。クルクルと回転良く動く大きな瞳だけは全く変わらない。 「マコは?」 「あたしは公務員。財務省にいるの」 「財務省? へえ、国家公務員なんだ」    高校時代は、私服と言えばジーンズ姿のマコしか見たことがなかった。けれども、今日はスーツに細身のスカートを颯爽と着こなしている。ヒールをコツコツと鳴らして歩く姿は、女性なのにやり手のキャリアのようだ。  まあ、俺の方も、一応はネクタイ姿なのだけれども、昨日のこともあって、くたびれているように見えるかもしれない。マコの目には、仕事疲れと映っていてほしい。  二人で高校時代の思い出話や今の仕事の話などをしていたら、あっという間に昼休みは終了して、午後のセッションの時間となった。 「コージ、何のセッションに出るの?」
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