3 月曜日

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「リーダーシップのやつ」 「あたしもそれなの。一緒だね」   マコは立ち上がると、「行こ」とセッションルームに向かった。顎先を少し上げ、姿勢良く歩みを進めるマコは、和服姿であったなら何とか組の姐さんのよう。  俺はその姐さんに付き添う渋いボディーガード、に見えたら良いなという希望オンリーなのだけれども、とにかくそんな振りでルームに入っていった。 *  ワークショップでは、予想外にたくさんのディスカッションとプレゼンテーションが展開され、時間があっという間に過ぎた。  研修会など寝て過ごそうと思っていた俺の思惑を、良い意味で覆す実践的でとても良いセッションだった。  マコのリーダーシップは、社会人になってますますその力を伸ばしたらしい。グループワークでのマコの姿は、高校時代に実行委員会で全校行事をまとめたり、サッカー部のごたごたをまとめたりしていたときの姿を彷彿させた。  マコはセッションの途中から、アクティビティのまとめ役を買って出た。その見事な進行ぶりは、参加者はもちろん、ワークショップのプレゼンターからも絶賛された。  帰りにたくさんの人から名刺交換をせがまれ、とても嬉しそうにしていた。 「すごい名刺だね、マコ。そのうちどこかの会社から引き抜きに来るんじゃない?」 「あたしは今の公務員の仕事が好きだから、企業には行かないと思う」  俺が訊くと、マコは即答でしかもあっさりと答えた。そのうちマコがプレゼンターで、省庁主催によるなんとかセミナーにでも参加することがあるかもしれない。そんなことが容易に想像できる。 「コージ、晩御飯一緒に食べに行かない? 久し振りだし」 「そうだな」  俺は昼を食べなかったから、研修会の終わった夕方には、今すぐにでも食えるくらいに腹が減っていた。それと、俺もこうして再会できたマコともう少し話をしたいと思った。  駅前の地下にレストラン街があるからそこに行こうと研修会場を後にする。「日本食が良い」と言うマコの指示に従い、和膳の店に入った。 「コージは今日はビールとか飲まない方が良いよね」  席に着きメニューを開くと、早速言われたことにギクッとする。さすがマコにはバレバレだったことは理解に易しい。 「昼に会った時、顔色悪かったし。仕事きついの?」
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