3 月曜日

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 そうそう。その線で。失恋で酒をがぶ飲みした、なんてことは俺だって忘れたいんだから。なので「ぼちぼちね」とか言って、話題を変える。 「マコは、高校卒業してからどうしてた?」  マコの学歴は、聞けば聞くほど俺とは比べ物にならなかった。俺が知っていたのは、高校を卒業して女子大に入ったところまで。  そこから交換留学生としてオーストラリアの大学に一年、それからイギリスの大学に一年、日本の大学に戻り卒業してから別の大学の大学院に入学。  省庁に勤めながら今も勉強中で、来年はアメリカの大学院に留学するのだという。 「本当はオーストラリアの大学院に行きたかったんだけど、上がアメリカに行けって言うからさ」 「それって、外務省の学歴じゃね?」 「そう? 仕事の参考になるなら何でも良いのよ。今日の研修会も良かったよね。まだまだ学ぶことがたくさんあるって感じ」  いや、今日のはむしろ、俺も含めてセッション参加者の方がマコからいろいろと学んだように思うのだが。  きっと彼女は官僚エリート候補なのだろう。高校時代からすでに只者ではない雰囲気はあった。 「コージだって、あのリーダーシップの研修会に来てたって事は、会社から将来の幹部エリートとして期待されてるんでしょう」 「そんなんじゃねぇよ」  俺はただの平社員で、営業以外の肩書きはない。後輩は出来たけれど、それは先輩後輩というよりも、同僚だな。仲間かな。みんな仲が良いし、職場は明るい。  マコにそう言われて改めて考えてみると、どうして俺がこの研修会に行くように言われたのかわからない。ただ課長に「行け」と言われたから来た、それだけだった。  思い出してみると、今日の研修会、特に午後のワークショップの参加者は、すでに役職についていそうな人たちばかりだった。  まあ、マコは特別として、確かに俺くらいに若かったのは、ほとんど見かけなかったような。  ジャジャジャ……  ケタましくヘビメタ風の着メロが流れたのは、食事も終わり、最後のコーヒーを飲んでいた時だった。 「ごめん、マコ」  高校生でもないのに着メロがヘビメタというのが少し恥ずかしくて、視線を宙に浮かしながら電話に出る。 「渡辺だ」  どうして部長から? 課長とは仕事も一緒にするし、世話になっているけれども、部長とは……
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