――夕刻、森の隠れ家にて

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って、こいつの所為で俺までパンに詳しくなってるじゃねーか。 無駄な思考を振り払うように、俺は彼女に問う。 「つうか、最近まで店を閉めてたらしいが何かあったのか?」 中心街にあるパン屋[ベーカリーカイロス]にここ一月程明かりが灯らなかったのは記憶に新しい。 「お父さんの用事でバタバタしちゃって。でももう大丈夫だよ!」 と、何でもない様に言ってはいるが、どこかぎこちない。 形容するなら、何か突っ込まれたくないことを訊かないでくれと言外に訴えているような、そんな表情。 だが、それが分かっていて尚掘り下げるのも野暮なので、 「ま、なんかあったら言えよ?」 とだけ伝えた。
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