第1章

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「秋良、私は君を、君だけを愛している。何があっても。だから、私を信じて欲しい。君にとって不本意なことがあろうと、それはもう終わったこと、過去だから。気にしてはいけない。これからも隠し子のひとりやふたり、現れることもあるだろうが……」 おい。 手にチョークを持っていたら、そいつを投げつけてやりたい。 慎一郎はばさりと紙を音立てて机上に置く。 「あら、怒ったかい」 真向かいには宗像が、ぱちぱちとパソコンのキーボードを叩いていた。 「君の心の声を代弁したんだけど? 似てなかった?」 「大きなお世話だ」 「もうすぐ帰ってくるんだろ、秋良ちゃん」 「ああ」 「何か、全然うれしそうじゃないよね。変だよなあー、いい歳したおっさんが、意中の女の子が大人になるまで待って、やっと念願叶ってめでたしめでたし……ってのに。もっとキラキラしい喜びってのないのかなあ」 いい歳した『おじさん』のキラキラは気持ち悪くないか? 宗像の問いはざっくり知らんぷりして、慎一郎は問う。 「きさまは何でここに入り浸っているんだ」 「もうすぐここの教員になるから。今のうちに慣れておこうと」 「今はまだ部外者だ。外野はとっとと出て行ってくれたまえ」 「だってパソコンがない」 「レンタルしたまえ」 「お前、Macユーザーだから助かるよ。もう一方のOSは何となくやだし。自前のマシンはデスクトップだし、タワー型だし? 今頃船便でどんぶらことこっちに向かってる最中だし」 「なら、適当なのを貸してやる。持って帰って自宅で作業すればいいだろう」 「うわー、太っ腹。独身はお金使い放題でいいねえ」 放っとけ。
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