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「秋良、私は君を、君だけを愛している。何があっても。だから、私を信じて欲しい。君にとって不本意なことがあろうと、それはもう終わったこと、過去だから。気にしてはいけない。これからも隠し子のひとりやふたり、現れることもあるだろうが……」
おい。
手にチョークを持っていたら、そいつを投げつけてやりたい。
慎一郎はばさりと紙を音立てて机上に置く。
「あら、怒ったかい」
真向かいには宗像が、ぱちぱちとパソコンのキーボードを叩いていた。
「君の心の声を代弁したんだけど? 似てなかった?」
「大きなお世話だ」
「もうすぐ帰ってくるんだろ、秋良ちゃん」
「ああ」
「何か、全然うれしそうじゃないよね。変だよなあー、いい歳したおっさんが、意中の女の子が大人になるまで待って、やっと念願叶ってめでたしめでたし……ってのに。もっとキラキラしい喜びってのないのかなあ」
いい歳した『おじさん』のキラキラは気持ち悪くないか?
宗像の問いはざっくり知らんぷりして、慎一郎は問う。
「きさまは何でここに入り浸っているんだ」
「もうすぐここの教員になるから。今のうちに慣れておこうと」
「今はまだ部外者だ。外野はとっとと出て行ってくれたまえ」
「だってパソコンがない」
「レンタルしたまえ」
「お前、Macユーザーだから助かるよ。もう一方のOSは何となくやだし。自前のマシンはデスクトップだし、タワー型だし? 今頃船便でどんぶらことこっちに向かってる最中だし」
「なら、適当なのを貸してやる。持って帰って自宅で作業すればいいだろう」
「うわー、太っ腹。独身はお金使い放題でいいねえ」
放っとけ。
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