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たとえば、慎一郎の身内はすべからく学閥の恩恵を受けている。
父は白鳳で学び、教鞭を執った。子供である兄の政と慎一郎は幼稚舎から大学部までを過ごしたストレート組。兄の妻も兄のクラスメイトで、つまりは同窓生。
その兄の娘の裕も大学から白鳳に入った。将来の同窓生予備軍だ。
慎一郎の教え子の仁とも、白鳳出身が縁で留学中にイギリスで出会った。
さらに武の身内の要が仁の友人ときたひには、もう出来すぎどころの話ではないが、これが学校を核に縁を持つ者の繋がりだ。特別不思議なことではないのかもしれない。
「ねえ、先生」要は二人のイチローに問う。
「裕がデートって、何の話?」
「あれ、君知らないの」
「はい、全然」
「そりゃ、オレの口からは言えないよ」
な、と慎一郎に話を振り、彼も生返事をした。
「私より君の方が良く知っているのではないかな」
「ううん、今、初めて聞いた。そっかー、近頃、雰囲気変わってどうしたんだろ、って思ってたんだ。あーあ、残念。いつまでも仁との掛け合い漫才見てたかったのに。終わっちゃうのかあ。でも相手は誰なんだろう?」
要は小首を傾げる。
「僕が知らない人物なのかな、彼女、傷付かなきゃいいけど」
「武先生の甥が、実の叔父より親身になってるよ」宗像は吹き出しながら言った。
「先生、ところで」
「ん?」
ポケットからタバコを出し、一服してから続きを促す。
「隠し子を認知したってホントですか」
口にした煙草でむせて、慎一郎は激しく咳き込んだ。
「へー、もうそこまで話が変節したんだ」
ひゅっと宗像は口笛を吹く。
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