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「変節とは、どういう意味だ」
「言ったまんま。もうかなり広まってるよなあ」
うんうんと要は頷く。
「広まったと何故わかる。発信源は……貴様か?」
「えっ。何の話」
「貴様が広めたんだろうと聞いている」
「あんた、ホント、バカ?」呆れて宗像は言い返す。
「口封じできないハハオヤとコドモがいるんだよ、きちんと言い含めたって怪しい二つの口を栓しなきゃダダ漏れになるだろうが」
偏頭痛のタネがばらまかれている。近頃板についてきた、こめかみを強くおさえる仕草をして、慎一郎は唸る。
「なかなか可愛い子でしたよね。どう見ても先生には似てないから、誰も信じてないけど。けどどういった関係なんです? 今じゃ隠し子のキーワードが一人歩きしてますよー」
「人の噂は三日で収まる」
「嘘こけ、人の噂も75日の間違いだろ」
「3日か75日かは横置いといて。先生、大丈夫ですか」
「何が」
「だって、例の客室乗務員の彼女と結婚するんでしょ。ご存知なんですか」
ご存知ない。
言わずに済めば良いと考えてなかったといえば嘘になる。しかし――どこから話が漏れてもおかしくない状況になってしまった。
どうしたものか。
「せいぜい悩みたまえ」
おかしくてたまらないように宗像は言い、Macbookの蓋を閉めた。
「じゃ、借りてくねー」と持ち主の了解も取らず、宗像は要とともにべちゃくちゃと談笑しながら出て行った。
こら、一応断ってからにしてくれ、貸すのはそれじゃない!
手を伸ばしても宗像には届かなかった。
君だけを愛している。
私を信じて欲しい。
宗像が口にした言葉だ。
ホントに大きなお世話だ。
彼女は、彼女ならわかってくれる。
わかってくれるだろう。
わかってくれるんじゃないだろうか。
それとも――覚悟が必要か?
一頃流行ったフォークソングのように、ぶつぶつと、慎一郎はつぶやいていた。
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