すべてはそこから始まった

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 ――コイツと一緒に、海を見たかっただけ……気分転換になるだろうなと思ったから。 「あっ、小林さん。お疲れ様です」  先に来ていた後輩は顔だけ振り向いて、嬉しそうに微笑んできた。  もうすぐ日没を迎えようとしている、国道沿いにある某浜辺。デートスポットにもなっている場所なので、平日ながらカップルがぽつぽつといらっしゃる。 「おー、お疲れ。外回りは順調だったか?」 「それなりに、まあ。……てか、どうしてここを待ち合わせ場所にしたんですか? 男同士で来てるの俺たちだけって、ちょっと――」 「どうしても海を見ながら、煙草を吸いたくてな。ひとりぼっちは寂しいから、お前を呼んだだけ」  眉をひそめ、辺りをキョロキョロする挙動不審な後輩に、笑いながら理由を告げてやった。 「げーっ。それだけのために呼ばれたなんて……」  他にも何か文句を言い続けるのをしっかり無視して、上着のポケットから煙草を取り出し、口にくわえた。 「……はい」  隣から火の点いたライターが、そっと差し出される。海風に消えそうなそれを手で包み込み、顔を寄せて煙草に火を点けた。 「いつも気が利くな、ありがとよ」 「別に。……小林さんには世話になってるから」  目の前で沈む夕日を浴びているせいか、後輩の頬を赤く染めているのを横目で見た。
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