二章 海と星、金魚

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気に食わないが、ここはガマンだ。魚は食べたい。 老人が言う。 「網は、そのへんで拾ええじゃないか。いいとこだけ、よって(選んで)つぎあわせれば、なんとか使ええだないか。だども、船がないことには、漁に行かれんが」 「なるほどね。船じたいは、修理できると思う。こっちには船大工もいるし、エンジンや機器類の整備士もいる。問題は動力だろ? 燃料がないんだ」 こっくりと、老人は、うなずいた。老人のように見えるが、栄養失調で老けて見えるだけかもしれない。 蘭は猛に、たずねた。 「どうするんですか? うちだって、ガソリンや重油は無限にあるわけじゃないですよ?」 そういうヤリクリをしてるのは、水魚と、龍吾の息子だ。くわしくは蘭も知らない。 だが、燃料を保管してるシェルターの地下貯蔵庫の広さを考えれば、よそへ、わけ与える余裕はないはずだ。 猛はニヤっと、悪魔っぽく笑った。考えこむときに、口元に、にぎりこぶしをあてるクセは、今も昔も変わらない。 「ガソリンね。そういうのは、薬屋が占有してるはずだよな。その点は、もうちょい熟考してみるとして。 とりあえず、一本釣りで、なんとかしてくれ。天日干しにしといてくれれば、おれたちのほうから、とりに来る。 あとは塩田だよな。おれたちも塩田があれば、じかに海水から塩作るより、ずっと楽になる。最後の精製は、おれたちがしてもいい。 とれた塩は、あんたたちと折半しよう。あんたたちも塩があれば便利だろ? 魚の保存にも使えるし」 「……あんたたち、なんで、そこまでしてくれるんだ? うまいこと言って、おれたちをこき使ったあと、皆殺しにする気じゃないか? どうも、こっちに条件がよすぎる」と、国中。 「最初は先行投資だよ。そのうち、ギブアンドテイクでバランスをとりたい。それでも信用できないか?」 「あんた、疫神だろ? バックに疫神教団がついてるんじゃないか?」 「おれはキャリアだが、疫神じゃない。イケニエをさしだせなんて言わないよ」 「どうだかな。あんだけ仲間、殺されてるからなあ」 蘭は立ちあがった。 「言っとくけど、さっき犯されてたら、今ごろ、おまえら全員、ぶっ殺してるから」 その瞬間、塩作りの青年たちが、手をとめて国中たちをにらんだ。おれたちの御子さまに、なんてことしやがると、その目が言っている。 険悪なムード。
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